ポップなギタリスト特集

Journeyのニール・ショーン、元Danger Dangerのアンディ・ティモンズ、元Triumphのリック・エメット、肩書きなしのニール・ザザ、日本でいえばTUBEの春畑道哉などが優れたギター・インストのアルバムを出している。複雑な曲構成を持つわけでもなく超絶技巧を披露するわけでもないが、ポップの感性でもって勝負しているアルバムをつくっている。歌心あるギタープレイが楽しめる。
ニール・ショーン「late nite」

なかでもニール・ザザが素晴らしい。日本盤は「Sing」以来すっかり出ていないが、輸入盤ではしっかりと作品を発表し続けていて僕も応援し続けている。「Staring at the sun」はもう悶絶もののメロディづかいである。職人技だ。エンディングのプリンスのカバー「Purple Rain」も、爽やかな感動が味わえる。ギターが歌うとはこのことか!

ニール・ザザ「Staring at the sun」

聴きはじめはこのよさが分からなかったため(当時はシュラプネル系のネオクラシカル超絶技巧を求めていたので)、しばらくほったらかしていた。しかし、ふとなんの先入観もなく聴き出すとあまりの素晴らしさに失禁しかけたというのはよくある話である。

AORについてもそうだった。はじめて買ってみたのはカナダのシンガーソングライター、スタン・マイズナーのMETROPOLISであるが、まったく良さが分からなかった。なんだ、この薄い感じの、がちがちに作り込まれたメロディは、と思っていた。(当時、フェアウォーニングばりのメロディックハードロックを求めていたので)

だが、やがてこの評価が変わってくる。なんと都会的な洗練されたメロディづかいであろう!まさしく職人技だ!となるのである。

そしてとどめを刺したのが、今ではTWO FIRESとして活動しているケヴィン・チャルファント、ジョシュ・ラモスによるバンドTHE STORMである。今では1stアルバムが高値で取引されている。それほどマニアの間では評価の高いバンドである。ただセカンドアルバムのほうが完成度は高いし、TWO FIRESはさらにいい楽曲が充実している。ただこのTWO FIRESは意図的に音質をラフにしているらしく、ガチガチにつくりこんだサウンドプロダクションではないため評価は分かれるだろう。

もうひとつBostonを紹介しておこう。マサチューセッツ工科大学出身の鬼才トム・ショルツがリーダーである。電気工学の知識を駆使し自宅にスタジオを造りデモテープをつくり、それが1700万枚の売り上げを記録し、それでもなお自分の求めるサウンドを求めて機材を開発しつづけ特許を取り……という、にわかには信じられない、とんでもない伝説をもつ男だ。そのせいか、70年代とはおもえないほど、サウンド・プロダクションが良好である。

ポップなギタリストを特集するはずがAOR紹介になってしまった。まあいっか。