けふの奇想
今日の私は奇想を欲してゐた。
奇妙な味と呼ばれるものを欲してゐた。
だがしかし私にまともな思考回路が備わつてゐるはずがなく、したがつて奇妙な着想を得るにはありのままの自分でよいのではないかと思つた。
しかしそれには原點に返るべくカーカスといふバンドを聽く必要があつた。
「屍體に花を咲かせませう」
といふ曲のタイトルにより私のアイデアポンプが動き出した。
「肉體不協和音」
により私のアイデアポンプから湧き出した水が、大河となつてうねりだした。
おまえ、人間つてやつだつたつけ、
といふフレーズで大河は海となつて生命を生み出しはじめ、そしてたうゝゝ宇宙を形づくりはじめた。
白銀の焔が渦動しながら點のごとくに收束し、大と小の星を生み出す樣子がありゝゝと目の前に浮かんだ。
大小二つの星は、ワルツを踊るやうに激しく回轉し、燃え盛る白銀の爐と化して網を投げ合ひ、もつれ合ひながらしかし一つになることはない。
せめぎあいの中でひしやげゆくお互いを想ひながらそつと光の手を伸ばし、觸れ合はせるその姿は、星といふ無機質の塊、といふより、人の姿そのものであつた。