八犬伝
山田風太郎の八犬傳と忍法八犬伝を読む。むかし南総里見八犬伝の
縮刷版を読んで、だいたいのあらすじは知っていたが、山田風太郎という巨匠がどういうふうにこの大伝奇小説を料理したのか気になったのである。
もちろん忍法帳シリーズの八犬伝は、アクションものとしてべらぼうにおもしろいのだが、実の章で馬琴の生涯と、虚の章で南総里見八犬伝のダイジェストを交互に、縄をなうように著述した「八犬傳」には感涙必至。曲亭馬琴と葛飾北斎と鶴屋南北が三者三様の作家論を戦わせる場面も熱い。正義に燃える説教臭い馬琴、皮肉と諧謔で世間を嘲る南北、それらを超えた境地に遊ぶ自由人、北斎。そして最後には、あっと驚く感動の、実が虚になり、虚が実になる、じつにすばらしいラスト。これNHKのドラマの原作とかにいいと思うな。