読書

ウッドハウス

ジーン・ウルフはやたらと出ているのに、ジャック・ヴァンス・コレクションが出そうにないので、奇跡なす者たちの解説でちょろっと言及されていたウッドハウスを読むことにした。定番らしいジーヴス&ウースターものを読み始める。もう一行目からして、これ…

ジャック・ヴァンスまだかキューゲルサーガまだか

中古で買ってすでにボロボロになってたのに、さらに経年劣化を重ねてボロボロになってきたジャック・ヴァンスの本。バラバラになる前に電子化してみようっかな。 とその前に、新刊が奇跡なす者たち以来さっぱり出てないとはどういうこった! ヴァンスコレク…

八犬伝

山田風太郎の八犬傳と忍法八犬伝を読む。むかし南総里見八犬伝の 縮刷版を読んで、だいたいのあらすじは知っていたが、山田風太郎という巨匠がどういうふうにこの大伝奇小説を料理したのか気になったのである。もちろん忍法帳シリーズの八犬伝は、アクション…

縮みゆく男

リチャード・マシスン/縮みゆく男を読む。 縮みゆく男は、その名の通り、とある偶発的な出来事によって身体全体がじょじょに小さくなっていく男を描いた作品である。蜘蛛よりも小さくなってしまった男のサバイバルを描く現在と、そこに至るまでの過去をカッ…

読書メモ

・フランクミラーのダークナイトリターンズ。噂に違わぬ大傑作。いうことなし。スーパーマンのリメイク映画も成功したようだからこのリターンズ映画化もするのかな。シンシティ完全版も楽しみだ。ダークナイトライジングなにそれってかんじだ。・フィリップ…

アラン・ムーア/フロム・ヘル読んだぞ〜

※ねたばれあり 読みすすめるうちに本のかおりが血の匂いへと変容し、その匂いにあてられて、めまいがしてくるような濃厚な狂気――ねじれた理性とでもいおうか――に満ち満ちた、切り裂きジャック幻想怪奇譚である。アラン・ムーアは、外界に顕現するような魔術…

前田利鎌 臨済・荘子

日本のアウトサイダー的著作かな。臨済と荘子その他の、著者の考える宗教的人間――つまりは自由人の生き様を、清冽で力強い言葉の数々で明かしていく。軽々と人の世を超えて自由へと至る彼らの魅力的な――悪魔的な哄笑の数々が眼前に蘇ってくる。この人語を絶…

ウェーイ

陶淵明全集はずいぶん前に買ったものだが、今あらためて読むとぐっと親近感がわいてきて、より深く味わえるようになったように思う。老荘的な人物かと思っていたが、そういう隠者の暮らしのかげに隠れて、かれの激しい気質やユーモアもうかがえる。官職につ…

福永光司

福永光司訳解の「荘子」が復刊していた。ぜひ買いたいが、これまたえらく高いなー。ほかにも訳注の人がいるのは、たぶん最新の荘子研究結果を反映させているのだろうと思う。たしか荘子のより古い文献が発掘されたとかで話題になってたし。荘子自体を読みた…

ジャック・ヴァンス追悼特集号

一番面白かったのはマグナス・リドルフ物と呼ばれる、痩せぎすの老哲学者が主役のSF短編「暗黒神降臨」かな。この慇懃無礼で皮肉屋のキャラはG.R.R.マーティンの方舟シリーズのタフと似てるな、このリドルフに影響されてるのかなーと思って読んでいたら、あ…

フィリップ・ホセ・ファーマー/リバーワールドシリーズ

一種の漂流モノといったらいいだろうか。未知なる土地に放り出され、裸一貫で、おのれの知識とそこにあるものだけを頼りにサバイバルを繰り広げるという冒険物語は、いつだっておのれの本能を刺激し、わくわくさせられるものだ。古くはダニエル・デフォーの…

読書メモ

・世界の歴史17 ヨーロッパ近世の開花 全体的には文句ないんだが、細かいところでは、ん?本当か?みたいなエピソードがあった。気になったのは、長篠の戦い(1575)での織田信長の業績がヨーロッパのブライテンフェルトの戦い(1631) に先んじて斉射戦術を行…

読書メモ

・ウィリアム・ギブスン「ニューロマンサー」。初めて読んだ当時は、電脳世界の描写がわけが分からなくておっぽりだしていたが、二度目に挑戦すると案外すんなり読めた。たぶんいろいろなところで、ギブスンに影響されたサイバーパンクの映像群を目にするこ…

三十年戦争びより

皆川博子「聖餐城」を読む。ドイツ三十年戦争を舞台にした骨太の歴史小説である。グリンメルスハウゼンの阿呆物語を読み終わって、現代人の視点から三十年戦争を描いた小説はないかと探していたら、かの幻想文学の大家、皆川博子が書いていると知って、小躍…

阿呆物語

上巻が絶版になっていたグリンメルスハウゼンの阿呆物語が復刊ドットコムに在庫が残っていたので、憂鬱が抜けないながらも、狂喜して小躍りしながら注文した。はたして本当に在庫が残っているんだろうか……。心配だ。ルネッサンスの時代の傭兵に興味がある人…

武器店とナイトワールドサイクル

ヴォークトの武器店シリーズおもろい。既視感があるタイトルだったのはF・ポール・ウィルスンの始末屋ジャックにイシャーって出てくんのね。ファンなんだろうね。ウィルスンのナイトワールドサイクルも激面白いのでおすすめ。古き良きパルプフィクションの要…

易経と高い城の男ごっこ

なぜかおもしろいな、と思って読んでいる。 筮竹をじゃらじゃらならして占うやつである。 さすが長い歴史を持つだけあって、内容はかなり深遠で哲学的だ。孔子はもしあと50年生きられるなら占い(易)の研究にすべて費やすだろう、と言っていたとかいないと…

創造力の源泉――スティーヴン・ラバージ「明晰夢 夢見の技法」

夜が来た いま、すべての湧き出づる泉は、その声を高め わが魂もまた、湧き出づる泉となる ――フリードリヒ・ニーチェ(うろ覚え名言より) 脳科学が進歩し、夢の機能的な側面についても、おおまかなところがわかってきたそうな。特に明晰夢についての研究が…

リアリズムなどくそくらえ!根源にせまる物語――中村融訳 リン・カーター「ファンタジーの歴史」

なぜわれわれはファンタジーを読むのか? ほんとうはわからない。ほんとうは気にしない。わかっているのは、次のような語句に出会うと、わたしの内部で何かが目をさまし、ぞくぞくして、反応するということだけだ――「タナール丘陵の彼方のオオス=ナルガイの…

人類は未だ闇の中――カール・セーガン「悪霊にさいなまれる世界」

いわゆるオカルトやらニセ科学批判の科学啓蒙書。 さすがカール・セーガンで、平易で簡潔。分厚いが非常に読みやすいので、すらすらと読める。いかに人間が騙されやすいか――宗教やオカルト、ニセ科学を無批判に受け入れることか。これでもかというほど、事例…

影を見つめる――河合隼雄「影の現象学」

ずっと前、ユング心理学にはまりたての頃に読んだ本である。 著者は河合隼雄で、日本でユング派が人気なのも多分にこの人の功績が大きいそうな。学問というほど堅苦しくはないが、 人間であれば誰もがもつ「影」というイメージに焦点をしぼり、 神話や文学、…

アメリカの闇を切り裂くひとすじの光――デイビッド・フィッシャー「証拠は語る FBI犯罪科学研究所のすべて」

ほったらかしにしておいたやつの再読。もう絶版なのかよ。 けっこう情報量が多いわりに図が少ないので読むのがしんどいが、なかなかおもしろい。連続殺人犯、毒殺魔、爆弾魔、テロリスト、犯罪組織――人間が人間に対してできる残虐行為の限界を試そうとでもし…

近世ヨーロッパへのいざない 中級編:歴史、とくに軍事史の本の紹介1

今、W・H・マクニールの世界史が人気らしい。 ご多分にもれず、僕もこういうマクロ史観の歴史本が好きだ。特にマクニールは、広い視野に、鋭い視点、新たな問題提起と――どこから読んでも新しい発見がある。それにマクニールの文章は、厭世家のそれではなく希…

感動って何なのだろう――フォレスト・カーター「リトル・トリー」と瀬名秀明「八月の博物館」との関連性

「リトル・トリー」や「ジェロニモ」にものすごく感動した自分にとっては衝撃的な記事を見つけてしまった。インディアンの少年の成長を描いたリトル・トリー、英雄ジェロニモの生涯を描いた「ジェロニモ」の作者フォレスト・カーターはKKK(クー・クラッ…

ユング派の泰斗による、大人になれない子どもの分析――星の王子さまとM・L・フォン・フランツ/永遠の少年

サン・テグジュペリの星の王子さまを読んだことがなかったので、読んでみた。せつないかんじで、とてもいい。じつは永遠の少年(プエル・エテルヌス)という題材を扱ったユング派分析家M・L・フォン・フランツの著書を読むため、予備知識のために読んだの…

心の叫びをみつけだす――グレッグ・M・ファース/絵が語る秘密

ユング心理学系の本を読みあさっていたのだが、これはいいなと思う本があったので紹介してみる。グレッグ・M・ファース/絵が語る秘密 ユング派分析家による絵画療法の手引きである。絵画療法とは、病気によって死を目前に控えた子供たちの、 心理療法とし…

近世ヨーロッパへのいざない 入門編:小説、映画、ついでにゲームなどの紹介

世界史の中ではけっこう近世ヨーロッパが好きだ。 この時代は世界史上でも重要な転回点が訪れた時代だと思うのだが、関連書籍はなんか少ないような気がする。いわゆる大航海時代みたいな、冒険家であるとか、海軍であるとか、海賊であるとか、海外植民地であ…

愛読書1 マーヴィン・ピークのゴーメンガースト三部作

マーヴィン・ピークのゴーメンガースト三部作を、一年のうち何回か読み直している(タイタス・アローンはたまに、だが)。ゴーメンガーストと呼ばれる迷宮じみた巨大な城は、年季の入った古臭い儀式と習慣によって維持されている。儀式の主催者である代々の…

愛読書2 ジャック・ヴァンス 魔王子シリーズ

ジャック・ヴァンスの魔王子シリーズを年に数回は読み直している。それほど好きな作品である……というよりもジャック・ヴァンスの日本での出版数が少ないから同じシリーズを読んで自分を満足させるしかないのだ。ジャック・ヴァンスという人物は、たぶん前述…

愛読書3 シオドア・スタージョン

シオドア・スタージョン。一昔前までは知る人ぞ知るというかんじだったが、今では短篇集が出まくっていて再評価が進んでいる短編の名手だ。僕ははじめ、人間以上とか夢みる宝石とかの長編でしか彼を知らなかったが、当時絶版で値段が高騰していた短篇集「一…