縮みゆく男

リチャード・マシスン/縮みゆく男を読む。


縮みゆく男は、その名の通り、とある偶発的な出来事によって身体全体がじょじょに小さくなっていく男を描いた作品である。蜘蛛よりも小さくなってしまった男のサバイバルを描く現在と、そこに至るまでの過去をカットバックで描いている。

マシスンの脂ののりきった筆運びは、なぜこんな状況になったのか、これから男はどうなるのか、という大きな謎を追いつつ、予想だにしない衝撃のラストまで一気に読ませる。

SF的な結構はもちろん整っている。しかし、それ以上に、この縮みゆく肉体という出来事を、じょじょに首が締められていくような、なんともどうしようもない、今の時代、誰しもが感じるような閉塞感として象徴的に描き出している。これはファンタジー/ホラー系の作家がもっとも得意とするところであろう。

職をなくし、他人に依存しなければ生きていけない男、家族の心も離れていき、すべての現実が遠ざかっていく……そして何も頼るものが無くなり、己の存在すら忘れ去られた時、閉塞感が極まったそのとき、男は死を選ぶのか、それとも……。

縮みゆく男 (扶桑社ミステリー)