アメリカの闇を切り裂くひとすじの光――デイビッド・フィッシャー「証拠は語る FBI犯罪科学研究所のすべて」

証拠は語る FBI犯罪科学研究所のすべて (ヴィレッジブックス)

ほったらかしにしておいたやつの再読。もう絶版なのかよ。
けっこう情報量が多いわりに図が少ないので読むのがしんどいが、なかなかおもしろい。

連続殺人犯、毒殺魔、爆弾魔、テロリスト、犯罪組織――人間が人間に対してできる残虐行為の限界を試そうとでもしているかのような凄惨な事件に、法と科学のメスを入れるのが、この研究所である。

連邦捜査局であるから州をまたがる犯罪を扱うわけだが、連邦機関のみならず、地方や州の法執行機関から証拠品が送られてくる。

したがって研究所は、ありとあらゆる犯罪のショーケースとなる。
さすが犯罪大国アメリカ。怪物としか表現しようのない犯罪者どもがわんさかといる。

しかし、この本のスポットライトは事件そのものではなく、研究所に勤める検査官、技術者、科学者たちに当てられている。もちろん最新科学の詰まった設備も魅力的だが、彼らの前ではそれすらも霞んでみえる。

道具はしょせん、使われるものでしかない。彼らの胆力、ねばり強さ、冷静な推理力が、この研究所を、世界一の犯罪研究所としているのである。


全然関係ないが、このヴィレッジブックスという文庫本の装丁はなかなか手触りが良くていい。表紙も凝っているのが多い。この本も思わず手に取ってしまった一冊である。